こうした主旨に賛同していただいた方は、まずは自分の家のエネルギー消費量と電力消費量が1/2になる取り組みを始めていただきながら、この運動をたくさんの人にご紹介してください。
ただ、そこでは「エネルギー消費量の多さ、電力消費量の多さ」が大きな壁になっています。エネルギーの供給側のシステムを変えるだけでは限界があります。エネルギーの消費側を変えていかなければうまく行きそうにありません。もちろん、原子力発電をなくすこともできないでしょう。
そもそも日本は、エネルギー消費量が少ない国として世界に知られています。ですので、「もうこれ以上は無理だ」という意見を述べる人もいるでしょう。でも、私はまだまだ減らすことができると思っていますし、私と同じように思っている人もたくさんいると思います。このメッセージでは、「無理だ」という発想を捨て、「挑戦しようよ」と呼びかけます。
減らすことに挑戦するのは家庭でのエネルギー消費量と電力消費量です。産業部門、業務部門(オフィスや病院、店舗など)、運輸部門もそれぞれに知恵をしぼってほしいですが、何よりもまず家庭でがんばることに大きな意味があります。無理に産業部門や運輸部門を減らせば、経済の停滞を招く恐れがあるからです。そして、この国に暮らすすべての人がすぐにでも取り組むことができるからです。省エネルギーや省電力消費に向かうためにお金を使えば、景気悪化を食い止めることができるかもしれません。
大きなシステムを変えるには時間と手間がかかります。小さなシステムである家庭でのエネルギー消費のあり方を変えるのにそれほどの時間はかかりません。1軒の家での削減量は小さなものであっても、それが集まれば大きな削減量になります。
でも、それが難しいのです。「省エネをしなくちゃ」と考えている人はたくさんいるはずなのに、家庭部門でのエネルギー消費量も電力消費量も増え続けているという現実がそれを示しています。
しかし私は、それは“本気度”が足らなかっただけだと思っています。日本人が本気を出せば、 家庭のエネルギー消費のあり方を大きく変えることができると信じています。
家庭での省エネや節電に取り組もうと考えたとき、「面倒、我慢」という言葉を思い浮かべる人が多いと思います。もちろん面倒なことや我慢しないといけない場面は出てくるでしょう。でも、楽しく取り組めること、そして「省エネ=快適、健康」となる知恵や工夫があるのです。そんな具体的な方法を集め、世の中に知らせ、実践することで、前向きで長続きのする省エネや節電ができることになります。我慢だけでは限界がありますし、何らかの副作用が出てきてしまうでしょう。
快適と省エネが結びつく知恵としてみなさんに知ってほしいのが「太陽や風とうまくつき合う暮らし」です。豊かな四季のあるこの国では、こうした知恵がたくさん生まれてきました。しかし近年、「太陽や風のことを無視して強引に冷暖房する、照明する」という暮らしに変わってきてしまいました。そしていつのまにか、そんな暮らしが便利で快適だと思い込むようになってきました。
でも、よく考え、自分の身体に素直に問いかけてみれば、太陽や風がつくり出す心地よさのありがたさと深さに気がつくはずです。“夏を旨とすべし”で生み出されてきた知恵と、ヨーロッパから輸入され発展してきた「冬の暮らしや住まいの知恵」を融合させることで、エアコンなどの機械に頼らずに心地よい暮らしが得られます。この“運動”では、そんな具体的な知恵や工夫を集め、みんなで共有していきます。
もちろん、そうしたことだけではなく、目標に向かうための衣食住のすべてに関わる知恵や工夫、実践を集め、共有していきます。
私の家ではエネルギー消費量や電力消費量を記録しています。私の知り合いにも「やってみてよ」と呼びかけ、実際にやってみる人が増えています。すると、ほとんどの人が「おもしろい」と言います。たくさんの人がこうしたチェックを行い、楽しく省エネや省電力消費に向かえるような工夫を考えていこうと思っています。また、どれだけの家庭が「エネルギー消費1/2&電力消費1/2」という目標に達成しているかということを、誰もが見えるようにしたいと考えています。
たとえば10年後。
日本という国はすごい。国民全体で、家庭から省エネ、省電力消費を進めて復興し、究極の省エネ社会を創り出した。そして何より素晴らしいのは、日本人がとても幸せに見えることだ。
こんなメッセージが世界中から発信されるようになればいいなと思っています。
2011年5月
野池政宏
するとこのように、およそ1985年のような電力消費の状況になれば、原子力発電は不要になりそうなことがわかりました。
ただし実際には、1985年にも原子力発電は稼動しています。だから電力消費の状況を変えるだけで原子力発電がなくなると考えるのは間違いでしょう。
でも、「原子力発電をなくそう」という意志をもって1985年の状況に進めば、原子力発電をなくすことができるように思います。
私は実家のマンションから仕事場に通っていて、私の部屋にはエアコンがなく、リビングには確か20インチほどのテレビがありました。パソコンの授業も受け持っていたのですが、NECのPC98という機種を使っていたと思います。家にパソコンはなく、携帯電話は世の中に存在していなくて、ホンダのプレリュードというマニュアルの車に乗っていました。
とくに今と大きな違いはないな、と私は思います。
それでも、エネルギー消費量や電力消費量は“今”に比べて大幅に増えています(下のグラフ)。その原因は様々にあり、たとえば家庭に関わるものを挙げれば、「世帯人数が減りながらも、世帯数がかなり増えた」という変化があります。エアコンの普及、家電の大型化や新しい家電の登場と普及などもその原因として挙げられます。
この運動は、あくまで1985年当時のエネルギー消費のあり方にしようというものであり、す べてをこの当時に戻そうとするものではありません。でも、当時のことを思い出してみること で、何らかの発見があるように思います。
(単位:PJ)
合計 |
産業部門 |
家庭部門 |
業務部門 |
運輸部門 |
||
2007年 |
全体 | 15194 |
7159 |
2290 |
1870 |
3657 |
| 電力 | 3743 |
1628 |
1044 |
995 |
77 |
|
1985 |
全体 | 11325 |
5798 |
1562 |
1194 |
2465 |
| 電力 | 2128 |
1120 |
513 |
434 |
データなし |
|
差 |
全体 | 3868 |
1361 |
728 |
676 |
1192 |
| 増加率 | 34.2% |
23.5% |
46.6% |
56.6% |
48.4% |
|
| 電力 | 1616 |
508 |
531 |
561 |
----- |
|
| 増加率 | 75.9% |
45.4% |
103.5% |
129.3% |
----- |
そして、もしそれが達成できたなら、1985年から“今(2007年)”にかけての産業部門にお ける電力消費量の伸びを吸収できることになります。産業部門は1985年に戻さなくてもよく なるわけです。
もうひとつ、おもしろい数字があります。
原子力による発電量 |
家庭部門電力消費量 |
|
2007 |
952PJ |
1044PJ |
このように、“今”の原子力による発電量と家庭部門における電力消費量がかなり近くなって います。つまり、家庭部門の電力消費量を半分にすれば、原子力による発電量を半分に削 減できるはずなのです。
エネルギーは産業にとっても生活にとっても不可欠なものです。国力を維持するにもっとも基本的なもののひとつです。しかし日本はエネルギー自給率がとても低いという状況にあります。太陽光、風力、地熱などの自然エネルギーをもっと活用するという方法もありますが、それですべてのエネルギーを賄うことは極めて困難です。国が原子力発電を推進してきた理由のひとつとして、比較的安定的にその資源(ウラン)が手に入るということもあったのです(もちろんそれだけではなく、複雑な理由でここまで来てしまったわけですが…)。
地球温暖化防止という問題もあります。ただ電力消費量を少なくするだけでは、この問題に対応できません。さらに言えば、原子力発電はCO2排出削減における重要なカードだったわけで、それをなくそうとするのであれば、これに代わる方法で対処しなければなりません。
その基本となるのが省エネルギーです。省エネルギーを進めながら自然エネルギーの活用を進めれば、CO2排出削減に寄与し、さらにエネルギー自給率を上げることができます。
究極の省エネルギー社会をつくることが、すべての問題を解決する道筋をつくるのです。
そして、究極の省エネルギー社会をつくっていくときに、まずは「家庭」からスタートを切り、その先頭に立っていこうというのがこの運動です。
家庭での電力消費量を1/2にしようとするとき、一緒にエネルギー消費量も1/2にしていく。そうやって、原子力に頼らない、究極の省エネ社会をつくりませんか?
そんなことは現実に可能なのか?それはどんな感じなのか?そんな疑問が湧くと思いますので、一例として我が家の状況をご紹介しましょう。
目標値(1/2) |
我が家 |
合否 |
平均値に対する割合 |
|
エネルギー消費量 |
44642MJ/年 |
40765MJ/年 |
○ |
45.7% |
電力消費量 |
2997kWh/年 |
2484kWh/年 |
○ |
41.4% |
こんなメッセージの言いだしっぺなので、ものすごく省エネに取り組んでいるかといえば、実はそうではありません。「そこそこがんばっている」といった感じです。でも確かに半分以下になっているのです。
細かい話はさておき、私の率直な感想とすれば、「エネルギー消費量も電力消費量も半分にするということは決して難しくはない」となります。本気になって取り組めば、誰もが実現可能だと思います。
先に我が家のチェック例を挙げました。
こうしたチェックが私だけにできるというのでは意味がありません。だから誰でもできるようにしてあり、それは「自宅の省エネ度を評価する方法」という資料にまとめています。
これを使えば、誰もが簡単に自宅でのエネルギー消費量と電力消費量が「近くの都市の平均値の1/2になっているかどうか?」がわかります。
|
|
前橋
|
さいたま
|
千葉
|
東京
|
横浜
|
川崎
|
新潟
|
合計(MJ)
|
1人
|
42354
|
51845
|
46019
|
49452
|
50045
|
49750
|
50940
|
2人
|
62516
|
73602
|
65842
|
70067
|
71058
|
70235
|
72320
|
|
3人
|
79082
|
93002
|
83101
|
88216
|
90018
|
88955
|
91873
|
|
4人
|
82969
|
97294
|
86951
|
92177
|
94242
|
93088
|
96261
|
|
5人
|
102771
|
117443
|
105378
|
110732
|
114051
|
112204
|
116795
|
|
6人以上
|
123647
|
138511
|
124769
|
130363
|
134590
|
131996
|
137896
|
|
電力(kWh)
|
1人
|
2790.6
|
3309.3
|
2984.9
|
3230
|
3138
|
3106.2
|
3130.1
|
2人
|
4275.5
|
5070
|
4573.1
|
4948.5
|
4807.7
|
4758.9
|
4795.5
|
|
3人
|
5026
|
5960.1
|
5375.9
|
5817.2
|
5651.7
|
5594.3
|
5637.3
|
|
4人
|
5171.4
|
6132.5
|
5531.5
|
5985.6
|
5815.2
|
5756.2
|
5800.5
|
|
5人
|
6115.2
|
7251.7
|
6540.9
|
7077.9
|
6876.5
|
6806.7
|
6859
|
|
6人以上
|
7418
|
8796.6
|
7934.4
|
8585.8
|
8341.4
|
8256.8
|
8320.3
|
とにかくやってみてください。それがこの運動に参加するスタートであり、安定して目標が達成できるまでチェックを続けるというのがこの運動そのものです。
高度成長期においては、便利で安いエネルギーを使って「快適」や「便利」を創り出してきました。そこで得られたものでこれからも享受すべきものもあるでしょう。しかし、強引に快適や便利を創り出してきたものもあり、過剰な快適や便利もあるような気がします。
“強引”の例として挙げられるのが「暖房」や「冷房」です。太陽や風の力をうまく利用するような知恵を集め、それが普及していればエネルギーを使わずにもっと心地よい住まいにできるはずだったのに、無理矢理に暖かさや涼しさを機械によって創り出すような暮らしが当たり前になっていました。
でも、ようやく最近になってそこに変化が生まれ始めています。一部の住宅のつくり手たちが、太陽や風の力を利用する「パッシブデザイン」と呼ばれる考え方に注目し、家づくりの実践を始めてきているのです。そんな知恵を使わない手はありません。
とくにこの「パッシブデザイン」には、心地よさと省エネルギーが両立するという素晴らしい特徴があります。こうした知恵を使うのは、まさしく「Forward to」です。
また、冷暖房機器、照明機器、給湯機器、家電などにおいては、そのメーカーが省エネ性能の高い製品を続々と世の中に出し始めています。およそこの5年間ほどの間の革新には素晴らしいものがあります。そんな発展を使わない手はありません。
さらには太陽光発電や太陽熱温水器など、省エネルギーに大きく寄与する設備があります。
そんな住まいにするのは、そんなもの使うのは、買い換えるのにはお金がかかるって?いや、発想を変えて、省エネルギーや節電につながるものにお金を使いましょうよ。それがこの国の経済を支えることになると思います。それが未来の子供たちの、豊かで人間的な暮らしにつながることになると思います。